アクトミオシンが駆動する細胞集団運動と組織形態制御
日時
2018年8月3日(金)16:30〜
場所
京都大学理学部1号館106号室(BP1)
⇒アクセス 建物配置図(北部構内)【2】の建物
講師
進藤 麻子氏(名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻 細胞制御学グループ)
概要
体内組織の形態は組織を構成する細胞集団が発生過程において適切に分裂、移動、配置することにより作られる。細胞移動の駆動力として、細胞骨格アクチンとモーター蛋白質ミオシン(II型)の複合体であるアクトミオシンが発生する収縮力がよく知られている。アクトミオシンが細胞内および細胞間で適切に制御されることは正常な組織形態を獲得するために必須であり、アクトミオシンの時空間的な制御機構の解明は発生生物学における重要な課題の1つである。本セミナーでは、アフリカツメガエル胚を用いたin vivoライブイメージングと数理モデルを組み合わせた研究を紹介し、特に隣接細胞間で協調的に制御されるアクトミオシン動態の意義を議論する。
開催報告
MACS-SG3では、名古屋大学大学院 理学研究科の進藤麻子博士に「アクトミオシンが駆動する細胞集団運動と組織形態制御」という演題でセミナーをしていただきました。組織形態形成は3つの階層[①各細胞のふるまい、②隣接細胞との協調、③組織の統一性]からなる現象だと考えられます。しかし、各階層に関する解析はよく行われていますが、階層間を繋ぐ解析はまだあまり進んでいません。
本講演の前半では、カエル初期胚の脊索形成時に見られる細胞集団運動Convergent Extension (CE)をモデルとした研究成果について説明されました。CEにおけるF-actinの細胞内局在をライブイメージング解析した結果、細胞間境界におけるF-actinの周期的な集積・収縮が観察されました。そこで、その周期性および細胞間の周期のずれの意義について数理シミュレーション解析を行った結果、これらの現象が効率良いCEを実現させていることが予測されました。加えて、F-actionの周期的な集積の分子メカニズムに関しても、Planar Cell Polarity (PCP) pathwayによる制御について説明されました。
講演の後半では、創傷治癒時における細胞挙動やアクチン-ミオシン骨格の挙動に注目した解析をお話ししていただき、発生時と(創傷などの)ストレス応答時における違いや共通点などについてディスカッションされました。(文責 高瀬悠太)